日本人の海外旅行は回復した? JTB「海外旅行レポート2026」に見る最新動向、20代女性がけん引
JTBは、日本人の海外旅行市場の動向をまとめた「JTB 海外旅行レポート2026 日本市場における海外旅行のすべて」を発行しました。2025年の海外旅行者数は前年比13.3%増の1473万2000人となり、回復基調が続きました。一方、コロナ禍前の2019年と比べると73.4%の水準にとどまっており、日本人の海外旅行市場は依然として完全回復には至っていません。
同レポートはJTB総合研究所が独自のアンケート調査や関係機関の統計資料をもとに分析・編集したもので、1988年以来、今回が39回目の発行となります。今回の調査からは、市場全体の回復が緩やかな一方、若い世代を中心に海外旅行への意欲が強まっている状況が浮かび上がりました。
2025年は1473万人が海外へ、それでも2019年比26.6%減
出入国在留管理庁によると、2025年の日本人出国者数は1473万1615人で、前年から172万4333人、率にして13.3%増加しました。JTBのレポートでも、四捨五入した1473万2000人を2025年の海外旅行者数としており、前年から着実に回復しています。
ただ、JTBによれば2019年比では26.6%減です。コロナ禍後に急速な回復を遂げた訪日旅行とは対照的な状況となっています。観光庁によると、2025年の訪日外国人旅行者数は4268万人と初めて4000万人を突破しましたが、同じ年の出国日本人数は1473万人でした。人の国際移動が活発になる中でも、日本人の海外旅行の戻りは相対的に鈍いことが分かります。
背景の一つとして挙げられているのが、円安や海外での物価上昇による旅行費用の増加です。JTBは2025年初めの旅行動向見通しで、海外旅行の1人当たり費用を33万4100円と予測し、2019年比で40.9%高い水準になるとみていました。円安や海外物価高が旅行費用を押し上げるとの見方を示しており、こうした価格環境が続く中で海外旅行市場は回復過程を歩んできました。
20代女性の出国率は34%、コロナ前に迫る
市場回復をけん引しているのが若い女性です。JTBによると、人口に対する海外旅行者数の割合を示す2025年の出国率は全体で12.0%でしたが、20代女性では34.0%に達しました。特に20代後半の女性は、年間の出国者数が2019年とほぼ同じ水準まで戻っています。
一方、20~50代男性では回復の遅れが目立ち、性別や年代によって海外旅行需要の戻り方に差が生じています。前年の「JTB海外旅行レポート2025」でも、20代女性の海外旅行需要の強さが指摘されており、若年女性が継続して市場回復を支えている構図です。
高くても海外へ――若い男性は日程や行き先を工夫
もう一つ注目されるのが、旅行費用の高騰に対する若年層の行動です。
JTBが2026年に実施した「海外旅行志向調査」によると、30歳未満の男性では、費用が高いと感じてもそのままの計画で旅行する人が比較的少なく、旅行内容を変更することで海外旅行を実現する傾向がみられました。
具体的には「行程を短くする」「同じ旅行先で安く行ける日程を探す」「予算内の海外旅行先を選ぶ」といった対応です。全体として女性より男性、年代では若い層ほど、旅行費用の上昇に合わせて計画を柔軟に変更する傾向が確認されています。
こうした動きは、「海外旅行を諦める」のではなく、期間や時期、目的地などを調整して予算内に収めようとする旅行スタイルが若い世代に広がっていることを示しています。
2026年も海外旅行意欲は上昇、焦点は「費用」と「若年層」
海外旅行市場は今後も回復が続くとみられますが、そのペースは緩やかになりそうです。JTBが2026年1月に発表した年間旅行動向見通しでは、1年以内に1泊以上の海外旅行へ「行く予定」と回答した人は23.0%で、前年調査から2.0ポイント上昇しました。特に29歳以下では、女性35.9%、男性30.9%と高い海外旅行意向を示しています。
一方で、円安や国内外の物価上昇など旅行者を取り巻く環境は引き続き厳しく、海外旅行の回復には旅行費用が大きな要素となっています。
2025年の実績から見えてくるのは、「海外旅行離れ」という一方向の動きではなく、世代によって回復速度や旅行への向き合い方が大きく異なる市場の姿です。20代女性が需要をけん引する一方、若い男性も日程や行き先を柔軟に変えることで旅行費用の上昇に対応しています。今後、日本人の海外旅行市場がコロナ禍前の規模へ戻るかをみるうえでは、旅行費用の動向とともに、こうした若年層の需要が他の年代へ広がるかが注目されます。