政府、「九州応援割」を検討 熊本地震で落ち込む観光需要を支援へ
政府が、熊本地震で打撃を受けた九州の観光業を支援するため、旅行代金の一部を公費で補助する「九州応援割」を実施する方向で調整していることが分かった。宿泊施設などで相次ぐ予約キャンセルを受け、旅行需要を早期に回復させる狙いがある。
複数の報道によると、検討されている制度では、ホテルや旅館の宿泊費、ツアー代金などの一部を国費で負担し、旅行者が通常より安い料金で九州を訪れられる仕組みとする方向だ。対象となる地域や割引率、実施時期などについては現在も調整が続いている。
政府は、熊本地震への支援策をまとめたパッケージに「九州応援割」を盛り込む方向で、FNNは来週後半にも発表される見通しと報じている。熊本朝日放送は、支援パッケージが8月28日にも取りまとめられる見通しとしている。一方、TBSは政府が月末までに取りまとめる方針と伝えており、正式な発表時期については現段階で確定していない。
地震の被害が比較的小さい地域でもキャンセル
今回、観光支援が検討される背景には、直接的な地震被害だけでなく、九州各地に広がった旅行のキャンセルがある。
共同通信によると、熊本県を除く九州6県の宿泊施設では、7月28日の熊本地震発生後、合わせて約17万4000件の宿泊キャンセルが確認された。建物被害が集中した地域から離れた場所でも旅行の取りやめが相次ぎ、観光業界からは風評被害を指摘する声も出ている。
特に鹿児島県では11万件を超えるキャンセルが確認されたとされる。熊本と鹿児島を結ぶ交通網への影響に加え、複数県を周遊する旅行商品が多いことも、九州全体への影響を広げた可能性がある。
政府も観光需要の落ち込みを課題として認識している。首相官邸が公表した熊本地震に関する政府対応では、被災地の地域経済再生に向けて「観光需要の回復」や「風評被害の払拭」が重要だとして、被災地や周辺地域での観光需要喚起策を迅速に進めるよう関係閣僚に指示している。
2016年にも「九州ふっこう割」
大規模災害後に旅行代金を補助して観光需要を回復させる取り組みは、今回が初めてではない。
2016年の熊本地震では、政府が「九州ふっこう割」を実施。国土交通省によると、「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」の一環として旅行費用を助成し、九州への旅行需要の早期回復を図った。
当時は九州7県が対象となり、報道によると、被害の大きかった熊本県と大分県では最大7割、その他の5県では最大5割の割引が設定された。
また、2024年の能登半島地震でも、石川県など北陸地方と新潟県を対象とする「北陸応援割」が実施されており、災害後の観光需要回復策として同様の仕組みが活用されてきた。
焦点は「対象地域」と「開始時期」
今後の焦点となるのは、割引の対象をどこまで広げるのか、そしていつから制度を開始するのかだ。
今回の地震では、直接的な被害が大きかった地域だけでなく、九州各地で宿泊キャンセルが発生している。このため、熊本県を中心とした限定的な支援とするのか、2016年と同様に九州の広い地域を対象とするのかが注目される。具体的な対象地域や補助率について、政府は最終調整を進めているとみられる。
TBSは自民党内から「9月のシルバーウィークの前には実施してほしい」との声が出ていると報じている。秋の旅行シーズンを前に制度を開始できるかどうかは、被災地だけでなく九州全体の観光業にとって大きな意味を持ちそうだ。
ただし、8月21日現在、「九州応援割」の対象地域、割引率、利用条件、予約開始日などは正式には発表されていない。今後公表される政府の熊本地震支援パッケージで、制度の具体像が示される見通しだ。